私も書店で立ち読みしてみたが、驚いた。
なんとニーチェが大変なモラリストになっているではないか。
ニーチェが倫理家になってしまい、道徳を語っている。
毒を抜かれたニーチェ。
近所の物知りのおじさんみたいに語っている。
ニーチェはそんな小市民的な男ではない。
ニーチェは殺人を是とした男だ。
無差別殺人でさえ、
それによって己が生きる喜びを得られるとしたら
それはやるべきであると言いかねない男である。
血なまぐさく、誇大妄想的で、狂気と快楽と
死と絶望と、性欲と破壊欲と、孤独と情熱と
一切がまぜこぜになっているニーチェの恐るべきカオス。
ニーチェほど危険な思想家はいないのだ。
だからこそ魅力があり、いまだに青白い強烈な光を放つ思想家なのである。
私の愛読書「ツァラトゥストラ」より、いくつか引用しよう。
(手塚富雄 訳)
かつて君はさまざまの情熱をもち、それを悪と呼んだ。しかし今は、君はそれらを徳と公言していいのだ。 ――喜悦と情熱
かれの魂が血を欲したのだ。強奪を欲したのではない。かれは匕首の幸福に渇していたのだ。―― 青白き犯罪者
善い者たちも悪い者たちも、すべての者が毒を飲むところ、それをわたしは国家と呼ぶ。善い者たちも悪い者たちも、すべての者がおのれを失うところ、万人の緩慢な自殺が----「生」と呼ばれるところ、それが国家だ。 ――新しい偶像
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