2010年6月28日月曜日

新作 「森の中の小路を蛇が渡る」


「蛇渡る長き一瞬ありにけり」
新聞の俳句欄に載っていた句である。

森の中を切り開いた小路。
一匹の蛇が悠然として横切る。
戦慄の長い一瞬。

このビジョンは、私の中に印象的な場面として染み付いた。

森は自然である。
森を分断する道は文明である。道は森を幾何学的に分断している。
しかし森は絶えず増殖し、道はやがて森に飲み込まれる運命である。
蛇は、自然と文明をつなぐもの。自然から出て、文明に入り、そして自然に帰るもの。
つまり、人間の身体。つまり私にとっては私の身体である。

私は、このビジョンを、描き留めたいと思った。
しかし鉛筆や絵具を使うことは思ってもいなかった。
森の木とか、道路とか、蛇の姿とかを写実的に描いたところで、
それは間接的なイラストレーションに過ぎない。

強力粉を練り、竹炭を少し加え、手で描いた。このやり方が感覚に直接的で良い。


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